雇われ人の真実

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知識習得
ようやくステップ3:脱・雇われ人を目指してに到達した。
儲かっている化学メーカー営業職に転職を果たして4年目、守破離における「離」のステージに入った。このステージにたどり着く頃には、新規開拓が成立したり、日々の店番的な業務も問題なくこなせて、営業マンとしての成果も出始める頃かと思う。この状況に満足してはいけない、というのが本記事で語る内容だ。

現代の小作人

世の中には、労働者を指す呼称がいくつかある。
  • サラリーマン
  • 勤め人
  • 宮仕え
  • 社員、従業員
  • パート、アルバイト
などなど…そして僕があえて使っている「雇われ人」という呼称。勤め人、宮仕え、サラリーマンという言葉は、それ自体が地位を持っていて、ややプラスのニュアンスがあると僕は感じている。僕は、あえて蔑称的に「雇われ人」という呼称を選ぶ。雇う・雇われるの関係を浮き彫りにした呼称だ。
先に挙げた呼称は、どれも雇われ人を指す。アルバイトも、派遣社員も、正社員も、等しく「雇われ人」だ。正社員>非正規雇用のような風潮があるが、僕は本質的には上下はないと思っている。皆、等しく「雇われて」いるからだ。
江戸時代には小作人という人達がいた。小作人とは、自分の土地を持っていない農民のことで、土地を持っている地主に土地をレンタルしてもらって、農業をさせてもらっていた。こうして生産された作物(米など)を年貢として地主に納めて、残りが自分たちの食べ物となる。土地(農地)という生産設備をレンタルして、作業をして、得た成果物を地主に納める。会社勤めというのはこれと全く同じではないだろうか。
食べ物と土地という、目に見えてわかりやすいから農民って大変だなと感じるのだが、これが綺麗なオフィスと紙幣となると、関係性がぼやけてきてしまう。とはいえ、小作人と地主の取り分は、四公六民といって、年貢が40%、小作人の取り分が60%というような配分であったから、小作人は効率が悪いながらも頑張った分だけ収入が増えた。そういう切り口では小作人のほうが現代の雇われ人よりもやりがいはあるのかもしれない。

ワリが良いか悪いかしかない

このように、会社と雇われ人というのは、地主と小作人の関係と本質的には同じだ。会社という田んぼで働かせてもらっている、田んぼを持たない小作人が、サラリーマンだ。そしてその田んぼの良し悪しによって、そこで働く小作人が幸せかどうか決まる。
田んぼで例えてみよう。土壌がよく、近くに川があり水も豊富で広大な土地に、美味しくてたくさん実る品種の苗を植え付ける小作人は、多くの美味しい米を手に入れられる。もちろん、40%は地主に取られてしまうが、絶対量が多いので、一家で食べても余るくらいの米を手に入れることができる。
逆に、土壌が痩せていて、水が乏しく、面積が狭い、山間の段々畑で、収穫量が少ない品種の苗を植えつける小作人は、どうなるだろうか。当然、収穫量が少なく、水の確保などの手間もかかる。損な中で年貢40%を納めたら、生活は厳しくなるだろう。会社で雇われ人をするのも、全く同じだ。
僕はかつて、痩せ土地で毎日水を撒かないと枯れてしまう田んぼで頑張っていた。そして少ない収穫の分け前をもらっていた。とても苦労して、長時間働いて、ちょっと多く成果を出しても、それだった。
そして儲かっている化学メーカーに転職したら、そこは大した手入れをしなくても稲が勝手にグングン育つ、豊かな田んぼであった。放っておいても米は大量に取れるので、大して働いていないのに、かつての1.5倍の分け前をもらえるようになった。
僕はこのとき、苦労した量や自分がいくら稼いだかとかは関係がない事を痛感した。僕に特殊能力や努力があったわけではないのに、年収が爆増した事実がその根拠だ。むしろ、痩せ土地で頑張っていたときのほうが努力や相対的に成果も上げていたが、分配は少なかった。
このように、個人の努力や成果うんぬんではなく、結局は所属する田んぼ、つまり会社がワリがよいのか悪いのか、という違いしか雇われ人にはないのだ。

正社員は定額使いホーダイ

携帯電話の契約プランで、定額使い放題がある。定額で、通話や通信が無制限になるプランだ。僕らはこのプランを使って、好きなだけ電話したり、動画を視聴できる。もし、使った分だけ使用量が加算されていく「従量課金制」だったら、不要な通話は控えたり、動画視聴も厳選するだろう。
雇う側も全く同じことを考えている。正社員を雇ったら、大きな固定費が発生する。給与のほかに、社会保険やら交通費やら備品代がかかる。最近では、未払い残業代やサービス残業に対する社会の目が厳しいのでそれらは鳴りを潜めているが、基本的には正社員というのは定額使いホーダイの存在だ。
そして、営業職というのは未だに残業代がグレーであり、上場企業でなければ「みなし残業」だったり、上限が決まっていて、そこから先はサービス化したりしてしまう。定額であるのならば、使い倒したいというのが「ホーダイ」を使う側の考えだというのは携帯電話の例でわかってもらえるかと思う。雇われ人の立場からしたら、定額使われホーダイである。

労働力再生産の経費

雇われ人の賃金は、どうやって決まるのか。その答えは「労働力再生産の経費」という言葉で説明がつく。雇われ人(小作人)は、労働力を会社(地主)に売っている。労働力とは、時間と労力のことだ。その労働力は、1日働くと失われる。つまり疲れる。それを翌朝までに再生産して、元気に出社するための経費が与えられている。これが実は給与の正体だ。家賃このくらい、食費このくらい、光熱費このくらい、スーツ代このくらい…と1か月分の経費を積み上げた分が、雇われ人の月収なのだ。多少の「おこづかい」も含まれてはいるが、数万円である。
そしてこの経費(給与)にはたいていの会社で「年収テーブル」が用意されている。歴史が長い会社ほど、しっかり作られている。このテーブルは、勤続年数や職種により決定されており、逸脱することはない。そして1段ずつ登るしかない。登る方法は、基本的には勤続年数だ。そういう仕組みなのだから、文句を言ってもどうしようもない。
仮に、労働者が1,000万円の利益を生み出しても、それがストレートに労働者に支給されるはずはない。労働者の年収が700万(側面経費込み)なら、残300万円が会社の取り分ということだ(これが会社の運営費となるから、会社は存続できるのだが…)。
また、マトモな会社ならば労働者に対し、家族と子供を持つ経費を与える。それが30代~40代の給与アップのテーブル、つまり年功序列の正体だ。ちなみにブラックや非正規雇用はこの切り口がない。独身1人分の経費しかずっとくれないので、家族を持ってしまうと困窮することになる。

高給取りも逃れられぬ運命

労働者というのは会社という「利益発生マシーン」における部品・パーツのひとつだ。会社に利益をもたらしたり、もしくは損失やトラブルを回避するための部品が営業マンだ。若くて、耐用年数が残っていて、支給する給与も少なくて済むうちは、コストパフォーマンスの良い部品となる。
会社とは、株主にとってのお金製造マシーンであり、社員を使って自動化させている。自動化にかかるコスト(人件費やオフィスの家賃、設備など)を払っても、利益が出る巨大なマシーンが「会社」だ。もし社員が一斉に辞めたら、一番困るのは社長と株主だ。彼らにとっては自動化しているからオイシイのであって、自分たちで回さなくてはならなくなったら、面倒この上ない。その役割の外注を受けて、社員は給与を受け取っている。優秀な社員が勝手に頑張って、定額使いホーダイで、毎月収益を自動で上げてくれるのが、株主と社長の勝利なのだ。
ゆえに、たとえ取締役などの幹部になろうとも、本質的には雇われる側だ。法律上は、経営陣というくくりになるが、人事権を持つ株主と社長に対してはどこまでも雇われ人だ。部長になって、役員になっても、さらに社長になっても、株主がいる限りこの「雇われ人」からは逃れられない運命にある。手綱を握られている状態から抜け出すには、自分が株主かつ社長になる、つまり独立しかないのだ。

等価交換を目指す

では、そんな運命に囚われている我々は、甘んじて受け入れるか、辞めて独立するしかないのであろうか。もちろん、独立は最終ゴールとして目指すべき点ではあるが、やはりいきなりは難しい。その中で僕が考えたのは「等価交換」である。等価交換とは「会社から求められる役割を全うする」こととそのために「最低限の労力・時間の提供」を行うことである。要約すると「会社に損させない程度にゆるく働く」ことだ。決してオーバーワークして必要以上に会社に儲けさせてあげることはない。
僕がこのサイトを「儲かっている化学メーカーの営業職」に限定して書いているのは、これが通用するからだ。儲かっていない会社に勤めると、会社は「もっと稼げ!もっと売れ!」と100%以上の労力の提供を強いてくる。特に、営業マンが頑張れば頑張るほど売上が増えるタイプの営業や、そもそも商品力がないけど営業マンがゴリ押しして無理やり買ってもらうようなタイプの営業をしている会社においては、僕の作戦が通用しない。こういう会社は労働者をビシバシ叩いてサービスさせた分を会社の運営費に充てているから、そうするしかないのだ。
僕が推奨している「儲かっている化学メーカー」は既に「収益を上げる仕組み」が完成している。他で作れないような材料や、既に大口の商権を確保しているから、儲かっているのだ。そこにおいて求められる役割は「大事故を起こさず、店番に徹する」がまず第一で、次に「ヒマだったら新規開拓もしてね」程度なのだ。ちなみにこの「ヒマだったら新規開拓」を達成したものは出世する。しなくても、クビになる事はないが運が悪いと配置転換はある。
このように、「仕組み」が完成している会社の営業マンになることにより、効率的にサボることができて、自分の時間を確保できるようになる。「仕組み」ができていない会社は営業マンに「利益をかき集めて来い!」と言い続けなくては会社が潰れるので、それをやめることは決してない。全力を出し、かつ労働者にサービス業務をさせないと成り立たない会社なのだ。そんな会社にしがみつく価値はない。
ショボいスコップ(商品)で、硬い岩盤を掘るのがブラック営業。高性能の重機を使って、軟らかい土を掘り、しかもその土地に資源がたくさん埋まっているのが儲かっている化学メーカーなのだ。
こうして、儲かっている化学メーカーで営業職ができれば、「求められる成果」と「提供する労力・時間」の等価交換は実現する。実際に僕は、平均すると毎日4時間程度の労働力を提供し、十分に求められる成果を提供できている。顧客からの要望に対応し、トラブルに対応し、クレームを防ぐ。社内からの要望を顧客と交渉し、自社の利益を守る。そしてたまに、新規開拓をする。これを平均4時間行って、残りの4時間をサボって自分の時間にしている。
この4時間をさらに新規開拓につぎ込めば、もう少し新規開拓件数は増えるかもしれないが、それはサービスになってしまうだろう。僕は毎年、1件ずつ新規開拓をしているが、これは社内でもトップクラスの実績となっている。これを2件3件ペースに上げることもできるかもしれないが、出世が飛び級になることはないから、やはり1件/年のペースで十分なのだ。
これは、3年目までの経験により得た熟練スキルだと僕は感じている。1〜2年目に同じことはできなかったと思う。1〜2年で知識経験を積み、社内営業を強化して、上司をハックし、新規開拓のコツを掴んだから達したのだと思う。