「コスパ良い企業の探し方」という記事には多くの質問をコメント欄より頂いております。
気がつけば膨大な量の質疑応答になっておりましたので、ここらでひとつ、編纂し直してみようと思い立ちました。
読者の皆様の率直な疑問の宝庫と思いますので、個別記事にして紹介していこうと思います。
下記のコメントを頂きました。
や より:
2020年6月10日 12:57 PM (編集)
ヤコバシさんは、「最終製品の化学薬品」のメーカーについてどう思われますか?
つまり効果がそれだけで完結するもので、たとえば、
・食品添加物
・排気ガス浄化用の薬品
・肥料
などです。これらは”原料”ではないため、おそらく樹脂と比べて「勝手には売れず」、大手化学メーカーが、人件費の安い国で質が良く安い上記の薬剤を大量生産した場合、簡単に負けてしまう気がします。これらは原料ではないために、お客様との密接な微量の調整などが不要となるからです。
お客様はより良い製品があれば、すぐにそちらに移ってしまうという懸念が浮かびます。(たとえば、排気ガス浄化用の薬品ならば、実際に使ってみてより良い方を買う、といった具合に)
一方で、同じファインケミカルでも、
・ボイラー用薬剤
・添加剤
などは、一応は原料なのでお客様の製品との綿密な関係性が必要なため、参入障壁が高くなりその結果ゆるふわ営業になるように感じます。(今回の登場する化学メーカーはすべて売上高営業利益率が5%以上あり、離職率や口コミも良いと仮定します)
【まとめ】
「最終製品化学メーカーでもゆるふわできますか?」——
ファインケミカルメーカーは化学素材メーカーに対しどのくらい劣りますか?
また、最終製品メーカーはファインケミカルに対しどのくらい劣りますか?—–
高純度の化学メーカーについてはどう思われますでしょうか。
たとえば、大企業ですが”信越化学”は高純度のシリコンウエハを独占し、超高利益です。また中小だと、高純度薬品(いまだとエタノールなど。工業用だと半導体用など)・高純度ガス・工業用試薬など、確かな高純度に対する需要が存在しています。
しかしその一方で、高純度はたしかに作製は難しいものの、「ただ高純度にすればいい」というわかりやすい目標があるため、そのうち中国などに追いつかれる気がします。
やはりお客様との綿密な調整が必要な(おそらくヤコバシさんが入社されている)有機の樹脂分野が最強なのでしょうか。
【まとめ】
「高純度化学メーカーでもゆるふわできますか?」もしよければご回答のほど、何卒よろしくお願い致します。
質問文を適度に引用しつつ、回答します。
「最終製品の化学薬品」のメーカーについて
(質問要約)
効果がそれだけで完結するもの
・食品添加物
・排気ガス浄化用の薬品
・肥料
これらは”原料”ではないため、樹脂などと比べて「勝手には売れない」のでは?
(回答)
「あとは使うだけ」状態の最終製品は安くなる傾向があります。
こういう品物の場合、勝手に売れるかどうかはシェア占有率次第です。
シェア1位ならばゆるふわでしょう。コモディティ品は値段の叩き合いになるので避けた方が良いです。
また、大手化学メーカーが、人件費の安い国で質が良く安い上記の薬剤を大量生産した場合、簡単に負けてしまう気がします。
原料ではないため、お客様との密接な微量の調整などが不要となるからです。
お客様はより良い製品があれば、すぐにそちらに移ってしまうという懸念があります。
(回答)
その通りです。
実際にそのように海外で大量生産されて国産品が不採算になった例はいくつもあります。
昔は中国、次にタイ、今はベトナム、インドネシア、マレーシアあたりで生産してますね。
一方で、同じファインケミカルでも、
・ボイラー用薬剤
・添加剤
などは原料なのでお客様の製品との綿密な関係性が必要なため、参入障壁が高くなる。結果ゆるふわ営業になるのでは?
(回答)
その通りです。
私はボイラー用薬剤には詳しくないのですが、その製品が「秘伝のレシピ」で作られるものなら良いと思います。
美味しい老舗のうなぎのタレは、簡単にマネできないから良いのです。
今回の登場する化学メーカーはすべて売上高営業利益率が5%以上あり、離職率や口コミも良いと仮定します。
(回答)
この仮定はどうなのかな…営業利益5%とは製造業的には平均的です。
10%まで行けとは言いませんが、6〜8%あれば「儲かっている」と言えて、つまり製品に競争力があるということです。
儲かっているかどうかで、その会社の製品が他社と値下げの消耗戦になっていないということを判断できます。
離職率や口コミも労働環境として大事です。会社が儲かっていても自分がツラいのでは意味がありません。
【まとめ】
「最終製品化学メーカーでもゆるふわできますか?」
(回答)
シェアが高いならゆるふわ要素あり。
それは利益率からある程度読み取れる。コモディティ品は危険。
ファインケミカルメーカーは化学素材メーカーに対し劣る?
(回答)
一般的にですが、ファインケミカルは純度が高かったり、精製するのに専用の高機能の設備が必要だったりで、どの会社でも気軽に作れるような性質ではないことが多いです。
そのため、寡占化が進んでいるならゆるふわ要素があると思います。
というか大企業くらいしかそういう本当のファインケミカル精製できないと思います。
設備が高度で高価だからです。
そのため自動的に寡占化します。
ただ、近年は中国あたりが資金力をもっていますので、そういうファインケミカル市場に参入する可能性もありますね。③質問でもその辺絡んできます。優劣はそこで語ります。
最終製品メーカーはファインケミカルに対しどのくらい劣りますか?
(回答)
最終製品は、コモディティ化していたら全然ダメです。
コモディティ化とは「世の中には類似品がたくさんあるよ、代替品はいくらでもあるよ」状態です。
最終製品であっても、その会社しか作れないものなら競争力がありますし、勝手に売れます。
しかし、似たような効用のものが世の中にたくさんあったら、値崩れします。
iPhoneは値崩れしないけどAndroidは値崩れするということです。
高純度の化学品について
信越化学は高純製品で市場を独占している。
中小メーカーでも高純度薬品(エタノールなど)・高純度ガス・工業用試薬などが存在している。
高純度品は製造が難しいものの「高純度にすればいい」という特性から、そのうち中国などに追いつかれるのでは?
やはりお客様との綿密な調整が必要な有機の樹脂分野が最強なのか?
(回答)
信越化学は規格外の企業なのであまり参考になりません。
もはや業界のトップランナーとしての設備投資と、信越というブランドイメージもあります。
当然、シェアは1位ですので今後も安泰でしょう。
信越ほどの実績と供給力がある会社が他にありませんので、あまり参考にならないというのが正直なところです。
さて中小企業の高純度品について。
これもシェア取れているかが大事です。
シェアが高いなら、大量に売れるので、安く売ることができます。
そのためますますシェアが取れます。この循環に入っていないとキツいですね。
有機の樹脂分野には化学反応による秘密のレシピがあるので、マネされにくいという特性があります。
【まとめ】
「高純度化学メーカーでもゆるふわできますか?」
(回答)
高純度品は、よく言えば「純粋な製品」ですが、逆に言えば「単純な製品」です。
そのため、秘伝のタレになりません。
焼き鳥で言うなら「塩」みたいなものです。
ただシェアが圧倒的であれば良いと思いますが、やはり海外勢の安売りには警戒しなくてはならないでしょう。
そういったコモディティな品を作っている会社は、利益率が悪いです。
薄利多売スタイルせざるをえないためです。
こういった品物は、とにかくシェア占有率が肝心です。