「コスパ良い企業の探し方」という記事には多くの質問をコメント欄より頂いております。
気がつけば膨大な量の質疑応答になっておりましたので、ここらでひとつ、編纂し直してみようと思い立ちました。
読者の皆様の率直な疑問の宝庫と思いますので、個別記事にして紹介していこうと思います。
下記のコメントを頂きました。
向上平八郎 より:
2020年5月31日 6:37 PM (編集)
先日、感謝のツイートをした者です。
ヤコバシさんのおかげで転職活動にて一定の成果を出せたことを改めて感謝申し上げます。無事に転職活動を終え、入社先を選定するにあたり、化学業界で働くヤコバシさんにご意見お聞かせ願いたいと存じます。
現在下記の内定先にて悩んでおります。
どちらも教えて頂いた未上場就職四季報に記載ありの会社です。【1】グリースのメーカー
・親会社は大手石油販売会社
・四季報に売上の記載はなし【2】工業薬品、化成品の商社
・売上に対しての利益率平均5%
・設立100年以上どちらも従業員150名程度で、
月残業時間10時間程度と魅力に感じております。下記をポイントに選定しようかと考えております。
・会社の存続度が高い(儲かっている)
・万が一転職した際に経験を活かせられる未経験の為、実際に化学業界に属されているヤコバシさんの意見を聞かせて頂けたら幸いです。
何卒、宜しくお願い致します。
まずは内定確保とのことで、おめでとうございます。下記、回答します。
Q1.メーカーか、商社か?
これはメーカーと私は考えます。
商社というのは、基本的に自社で商品開発や製造ができません。
メーカーに「売ってください」「作ってください」とお願いすることしかできません。
当然、メーカーも持ちつ持たれつの関係ではありますが、最悪、その商社でなくても他の商社を使って販売することはできます。
また、現在は直接取引も増えており、商社不要論も出てきています。
郵送やFAXで仕事してた時代には、商社を噛ませることによって複数の材料の決済を一括にできる、
と言う意味で事務の手間が減るので商社は必要でした。
今はまだ「昔からそうだから」ということで商社を噛ませています。
しかし収益性の向上を目指すメーカーや、末端に近い小売は、商社いわゆる卸売業に支払っている口銭(マージン)を節約するべく、直接取引を増やしていきます。商社をハズしていく流れは加速していきます。
長瀬産業などの大手化学商社や、大手企業のグループ商社なら別ですが、独立系で中小規模の商社はあまり旨味がありません。
このあたりは、私の電子書籍の最後の方にも「商社はオススメしない」というコラムを書いたので読んでみてください。
あと商社は、接待とか社内飲みとか多いです。
※新型コロナウィルス蔓延前の話です。
一方で、メーカーの営業マンになると、自社の商品(今回の場合はグリス)にかなり詳しくなれます。
製品の特性や、特殊な製法、過去のクレーム事例など、かなり実践的な知識が身につき、今後長く使える知識となることでしょう。積み上げが効きます。
簡単に廃れる種類の製品ではないはずです。
ちなみにこういった”踏み入った情報”はメーカーの人間しか知ることができません。
商社には絶対教えません。当然、企業秘密ですから…
Q2.非公開データがあり、不安
グリスのメーカー、売り上げの情報がないことが気がかりではあります。
しかし今回のケースの場合、大企業のグループ会社ならば問題はないと考えます。
親会社の連結決算に組み込まれていると思われます。
そのため、グループ全体で儲かっているなら良いのではないでしょうか。
ただ何とか、内情を知りたいところではあります。
そこで転職口コミサイト、最悪匿名掲示板などで情報収集して内情を探りましょう。
Q3.転職をさらにするなら?
もしさらなるステップアップ転職を考慮する場合、メーカー経験はあると有利だと思います。
メーカーというのは、「売って終わり!」…とはなりません。アフターサービスがついて回ります。
これは販社(商社)では体験できないことです。
なぜなら彼らは窓口ではありますが、実際に対応をするのはメーカーだからです。
化学メーカーならなおのこと、トラブルがあった時にはメーカーが対応します…いや、せざるを得ません。
採用されて売れ始めてからも、不具合やクレームは必ず起きます。
それに対処したり、改良する過程こそが、メーカー営業の役割でもあります。
商社はクレームが起きたらメーカーに投げることしかできません(商社が謝っても問題は解決しないわけですし)。
私が思うに、小売・商社といった他社が作ったものを販売代行するタイプの営業職は未経験の人でもやれなくはないです。
対して、メーカー営業の経験は販売する力だけでなく、トラブル対応や、その品物の注意すべき特性など総合力が鍛えられるところが良いと思います。
そのため商社は、これからの世の中では厳しくなっていくと思います。
ひと昔前は商社マンが情報源になりましたが、成熟した今では、その価値を失いつつあります。
お客様の偉い人をキャバクラゴルフで接待して情報聞き出して…というのが商社の主な仕事でしたが、近年はコンプライアンスが重視され、そういった活動がしにくくなってきています。
そもそもそういう動きはメーカーにいたとしても、できます。
そのため業界では「商社って今さら要るの?」と言われたりもしています。
しかし今までの商流を変えるのが面倒、とか
与信管理が面倒、とか
最悪、取引先が倒産しても商社を防波堤にしよう(不良債権を商社が負う)とか
そういった思惑で商社を間に挟んで、商取引しています。
※ただし長瀬産業などの最大手は別格です(海外品の専売権がある、等)。
長くなりましたが、とにかくメーカーにしてほしく思います。
商社マンという響き、カッコよく聞こえるのですが、メーカーがいないと何もできないのも商社の実態です。
お客様とメーカーの板挟み役で、ストレス溜まると思います。
参考になれば幸いです。