3年目までで基礎的な知識経験と、新規開拓に着手をし始めたら、徐々に自分の時間を確保していくステージに入る。しかしながら、本業の成果が上がっていないと上長からマークされたり、配置換えの対象になってしまう可能性がある。配置換えをされて内勤や現場に送り込まれてしまっては、自分の時間を作り出すことが困難になってしまう。自由な時間を増やせる営業職というポジションを守るためには成果を出すことが必要だ。
「使える営業マン」であればいい
まず心得てほしいのは、お客様が営業マンに何を求めているか知っておくことだ。これは自分が営業される側の立場になればわかりやすい。もしあなたが欲しいものがあり、営業マンに質問をしたとする。どんな営業マンがいい営業マンだろうか。身なりがしっかりしている営業マン?愛想がいい営業マン?もちろんそれらの要因も大事だが、実はプラスアルファの要素だ。
最優先なのは「知りたい情報を教えてくれるか」「自分にあったものを教えてくれる」「プロの視点でオススメのものを紹介して欲しい」というような項目だ。つまり実用性が最も大事だ。使える営業マンになることだ。
この実用性が同等だったら、先述の愛想だとか第一印象が決め手になることもあるが、営業マンの良し悪しを決める90%は使える営業マンであるかどうか、それだけだ。特に、一般消費者向けの商売ではない化学品の営業マンであれば、なおさらだ。コモディティなものを扱う営業マンは、商品で差がつかないから、残りの10%で戦わなくてはならない。だからシンドい。
愛想が悪くても的確な提案ができて、豊富な知識を持つ営業マンは、売れる。逆に、第一印象がよくて愛想がいい営業マンであっても、肝心の知識がなかったり的外れな提案をしてくる営業マンは決して売れない。知識経験があり使える営業マンが、第一印象を磨いたら最強なのはいうまでもない。
とにかく使える営業マンになろう。
お客様も暇じゃない
化学メーカーのお客様にとって「使える」とは何だろうか。それはお客様の課題を1日も早く解決できること、これしかない。お客様というのは、いつも何らかの問題を抱えている。
- 良い製品が作れない
- コストダウンしなくてはならない
- もっと手間を減らせる材料がほしい
- 新しい法規制に対応した原料が必要
これらの課題を1日も早く解決することが化学メーカーの営業マンの仕事だ。
お客様が抱えている問題を解決できる商品を提案・提供できたら、すぐ売れる。これは当たり前のことだが、意外と気が付いていない営業マンが多い。自社のものを売るために、と考えるのではなく、お客様が買いたいと思うものを提供しよう。お客様の問題を解決できる提案をすれば、自ずと売れる。
お客様は日々、これらの課題を解決すべく努力しているから、暇じゃない。だからこそ、無駄な接触は迷惑だ。愛想が悪くても、マメな連絡がなくても、課題を解決してくれる営業マンをお客様は待っている。
面談の削減
まずは面談を削減できないか考える。面談が必要なのは、4つのタイミングだと僕は経験から考える。
- 初回(名刺交換)
- 2回目(資料・サンプル)
- 進捗があり、情報量が多い
- 価格の相談・交渉
初回はさすがに面談する。名刺を交換し会社紹介を行い、案件の条件ヒアリングをするためだ。熟練し、経験を積んだ営業マンであれば必要な情報の多くをここで収集できる。そして、自社がそもそも力になれそうかどうかをここでジャッジする。できそうにないときは、いさぎよく諦めて、その場で辞退しよう。お客様も暇ではないから、無駄に期待をさせないこと。そのためにはやはり、3年目までに積み上げた知識と経験が大切だ。1〜2年目では瞬時のジャッジが難しい。
2回目は具体的な提案に入る。初回のヒアリングを通して、お客様の役に立てそうな資料や商品のサンプルを提示する。ここでもやり取りする情報量が多いので面談をした方が良い。同時に、お客様もまだ不安であり、あなたが信用できる営業マンかどうかジャッジをしている。ちなみに第一印象を磨き、知識経験を十分に身につけていると、この2回目までで大半のお客様の信用は得られる。
信用とは、「ちゃんとした会社・営業マンかどうか」「この営業マンは使えそうか」この2点だ。どちらかが欠損すると取引は進展しない。
そこから先は基本的にメールや電話での情報交換となる。お客様からの質問や、追加の要望などはメールや電話で対応できる。サンプルも持参せず直送すればよい。もし案件が具体的に進んで、情報量が多くなってしまうときには訪問すると結果的に効率が良いので、訪問する。
そして案件も終盤に差し掛かったら、お値段の話になる。もちろん、初回面談時に大体のコストの話し合いはしているので、箸にも棒にもかからないような値段ではない。ここではお客様がいくらまで出せるのか、自社はどこまで歩み寄れるのか、諸条件を口頭でコッソリ話すために面談をする。これは電話では伝わらないニュアンスや顔芸、メールで記録に残してはいけない密談をするために面会する。
上記が主に訪問・面談するタイミングだ。当たり前じゃん、と思う人もいるかもしれないが、世の中には「営業は足で稼げ!」「訪問件数!面談時間!」「ちょっとした用事でも口実にして訪問せよ」という価値観でいる者たちがいる。これは20年前の正解だ。この20年間で、お客様が抱えている問題は複雑化し、スピード対応を求められている。残業も減らさなくてはならない。要求水準も高まっている。そんな環境下で、悠長な20年前スタイルの営業はあまりにも非効率だ。僕らはこれらの古い価値観から進化して、いかに早くお客様の課題を解決するかに一生懸命になるべきだ。
電話の削減
電話というものは使い所に注意すべきツールだ。電話のよいところは、下記の点がある。
- オンタイム(緊急性)
- 多くの情報量をやり取りできる
- 若干であれば声色でニュアンスが伝わる
- 文書の記録に残らない
しかし同時に下記のデメリットもある。
- 相手の時間を奪う
- 自分の時間も使う
- タイミングが悪い時もある
- 再確認(見直し)ができない
最近では「電話は悪」という声も多いが、それは電話である必要性がないことを電話するからだ。例えば、急ぎの用事ではないアポイントの日時のことならメールで済む。営業マンはそこを使い分けるべきだ。全てメールというのも支障がある。
僕が推奨するのは、大枠をメールで伝えて、微妙なニュアンスや秘密にしたいことを電話で話すことだ。情報量が多い場合も、まずメールで諸条件や情報を入れて、検討する時間をとってもらった上で、電話して短時間で済ませる。これが相手にとっても都合が良いと僕は考えている。電話というのは瞬発力が求められるから、電話で即ジャッジできないこともある。そこをメールで補完する。
「とにかく、なんでも電話しちゃえばいいや」という営業マンが意外と多いので、彼らと同じにならないように気をつけよう。
移動の削減
最後に、移動時間の削減について。
移動時間というのは、営業マンにとっては最大のロスになる。しかし、意外と仕事している感が出てしまうので注意が必要だ。しかしこの移動時間の削減は、先述の面談の削減によりほとんどが解決する。面談する回数が減れば、移動の時間は減るからだ。もし「どこでもドア」がこの世に存在してしまったら、面談と移動は切り離されてしまうが、そうではないので、この2つはセットだ。
しかし、その前段階として電話・メールを駆使しているから、面談回数を減らせる。面談回数を減らせるから、移動時間が減らせる。そう、ここまでの全ての工夫はこの移動時間の撲滅のためにあったのだ。
こうして効率化しつつもお客様にとって使える営業マンになることによって、自ずと営業の成果は出る。そして効率化して浮いた時間は、自分のものにしよう。
続き:余暇時間の使い道