守破離の考え方において、まずは守を大切にしよう。当たり前のことであるが、成果を求められる営業マンという職業においては、それを忘れがちだ。正しい攻め方は正しい守り方を知った上で、大きな効果を出せる。
焦るな。
守りをおろそかにしてしまうのは、ただひたすらに営業成果を焦ってしまうことが原因だ。この焦りは、自分の中から湧いてくることもあるし、外部(上司や先輩)から駆り立てられる場合もある。外部からの駆り立ての場合は、かわす方法はいくらでもあるが、自分自身の中から湧いてくる焦りは、自分でコントロールしなくてはならない。
ただ僕の経験からいうと、自分自身で焦る人は真面目だ。成果を出さなくてはいけないと思っているからだ。自分の仕事は成果を出すことだと思っているからこそ、焦るのだ。これを高いモラルと僕は呼んでいる。一般的に言われるモラルとは、倫理・道徳など犯罪を犯さないことだとか、禁止事項に関わることが多い。僕がいうモラルとは、そのような低い次元ではなく、高い次元のモラルを指す。「成果をあげよう」「貢献しよう」「協力しよう」というものが高いモラルだ。この性格は先天的なものであり、外部から植え付けることは難しい。
この高いモラルを生まれながらに持つ人は、営業マンとして高い成績を残せる。
営業の守破離
「守」をマスターするのは当然として、「破」と「離」はどういうものなのか。説明していく。
守:店番
まず「守」だが、これは既存客をしっかり満足させることだ。
既存客というのは既に会社自体についているお客さんであり、これまでの実績や信用でもって、取引をしてくれているお客さんだ。このレギュラーのお客さんをしっかり対応し、クレームや苦情がないようにお世話したり店番をすること。これが「守」だ。
破:新規開拓(既存市場)
「破」は既存市場の新規開拓になる。
既存市場というのは、既に自社が商品を持っていて、競合他社とシェアを奪い合っているような市場だ。競合他社も似たような製品を持っていて、値段や性能に若干の差があるような状況だ。当然、ライバルが持っている商圏を奪うこと、シェアを伸ばすことが実務になる。
言い換えたら、既に彼氏がいる女子に「俺と付き合わない?」とナンパするようなものだ。
離:新規開拓(新市場)
「離」も新規開拓になるが、これは既存市場ではなく、新市場の開拓となる。
新市場とは、これまで自社が売ってこなかった業界や客層へ、新しい常識を持ち込むことだ。全員が裸足で暮らしている国に、靴を売り込むようなことだ。一見、誰も履いていないならどうせ売れないよと思うかもしれない。だが、もし売れて常識になったら、ものすごい売り上げになるだろう。当然、それをみて競合が参入してくるのだが、先行したものにはブランド力と実績という優位が生まれる。もちろん、どんな商品にもプロダクト・サイクルはあるからいつかは競合が増えて収益は落ちるのだけれど、最初の大きな部分の利益を得ることができる。こういう、新市場を切り開き続ける努力をしている会社は成長する。
そして、そんな会社の中で方針を決め、人を動かすのは営業マンだ。技術も生産も、そのような動きはできない。営業マンが進めというから、技術も生産も動けるのだ。営業マンはプロジェクトリーダーという一面も持っている。
一人前の店番が土台
さて本記事のメインテーマである「守」だが、先述の通り一人前の店番になり、既存客を満足させることが最初のステージだ。一見、簡単そうに見えるが多くの学びがあるフェーズと言える。なぜなら、どんなに注意していても製造や運搬に不備があって苦情は起きるし、その対応をしなくてはならないし、価格交渉も定期的に起きる。その一連の事件・事故に巻き込まれながら、営業マンに必要な知識経験が自分に蓄積されていく。
この知識経験というのは、本で読んだり、先輩上司から言い聞かせられても身につかない。自分が当事者になって、汗をかき、わからないなりに人に聞いたり、頼んだりする中で血肉となっていく。この経験を1〜2年すれば、ケーススタディが自分の中に蓄積する。そうすれば応用も効くようになってくる。
接近戦も守り重視
お客様と会話をする際にも、まずは守りを固めたい。守りというのは「聞く」を主体としたコミュニケーションだ。逆に積極的に自分が喋るのは「攻め」だと言える。営業マンにおいては守りを意識した方が良い。自分が営業マンだと思ってしまうと、自分が喋らなくてはと焦ってしまう。現代人は基本的に「聞いて聞いて星人」なので、聞く側に回った方が受けが広い。
この守りの姿勢は、営業において忌避される「売り込み色」を減らすことにも役立つ。あなたも家電量販店で経験がないだろうか。こちらの話を聞かずに一方的に売り込んでくる店員を。聞いてないことを聞かされることほど、退屈な時間はない。この接近戦テクニックについても、別記事で詳細に説明する。
以上、営業においてはまず「守」を意識して焦らずに経験を積もうという内容だった。
続き:先輩は反面教師
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