【参考文献】『営業の牧田です。』

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知識習得

最近、コメントで「食品業界はどうでしょうか?」との質問を頂いた。僕は建築業と化学メーカーの営業しか経験はないのだが、食品業界について理解を深める文献を紹介したい。

食品に限らず、飲料やホームセンターといった、いわゆる「一般消費者向け」のメーカーの実態を知ることができる貴重な資料だ。

『営業の牧田です。』(全3巻)

その文献とは漫画だ。

『営業の牧田です。』かわすみひろし2008講談社

全3巻と短めなのと、10年以上前の作品のため非常に安価に手に入るので、営業という仕事がどんなものであるか、よく知らない人は是非読むことをオススメする。

僕も転職を検討していた26歳の頃に、飲料業界などの営業の形態を知りたくて購入した。

ちなみに、僕は本作を読んで「食品や飲料メーカーはやめとこう…」と思った。

簡単なあらすじ

簡潔にだが、あらすじを紹介する。

主人公の牧田くんは28歳。新卒で入社した大手ビールメーカー「エルビスビール」の営業マンだ。

「ビール」と聞くと、素人的には「儲かっている」「すたれない」「ブランド力がある」などと直感するが、現実はそんなことはない。実社会でもそうだが、この手の商品は寡占化が進んでおり、熾烈なシェア争いをしている。

ビールの営業マンが営業に行く先は、スーパーマーケットや、居酒屋だ。

今ではネット通販も多いが、当時(2008年ごろ)は小売店の商品棚や、居酒屋のメニューに載せてもらわなければ、ビールは売れない時代だった。だから、牧田くんをはじめとして、各社の営業マンたちの主な仕事は、スーパーマーケットの店長に気に入られたり、居酒屋の店主に契約してもらうことなのだった。

当然、似たような商品を作っているメーカーと争うわけである。

もともと自社ビールを目立つところに置いてもらっていたのに、突如ライバルメーカーにその位置を奪われたりする、そんなリアルな厳しさも描かれている。

しかも後半になると、ビール自体が売れなくなり始め、代わりに第三のビールをどうやって売るか?という話になってくる。漫画なので爽やかに努力を描いているが、かなりの苦労話でビビる。

ちなみに、このような販促形態はビールだけではない。例えば菓子メーカーの営業マンが知人にいたが、彼もスーパーマーケットを駆けずり回っていた。

飲食物でなくても、ホームセンターで売られているような日用品なども同様のメカニズムで、ホームセンターのバイヤーや店長に「ウチの商品を商品棚に置いて!」という営業スタイルだった。

「THE・キツい営業」の1つ

正直言って、この牧田くんがやっている営業は「売り子」である。それは僕が絶対やめたほうがいいと思う種類の営業スタイルだ。(参考記事:営業タイプ5分類

世の中に浸透している「営業はキツい」というイメージ。これを見事に体現しているのが本作、牧田くんの営業の実務である。

気難しい客に、足繁く日参し、雑用をサービスで行い、毎日遅くまで残業。そして上司には詰められ、自分なりに頑張るものの、やっぱり売れない。

そんなキツい営業の代表みたいな働き方を追体験させてくれる良作だと僕は思う。

僕も、建築業ではあったが、似たような営業スタイルだったから、この牧田くんの苦労にすごく共感した。差別化が大してできていない商材を売ることは、すごく大変だ。

牧田くんは、そんな逆境オブ逆境みたいな状況を、持ち前の前向きさとガッツで打破していくのだが…正直言って可哀想すぎる。

なんでそんなキツい戦場で、わざわざキツい戦いをして苦しんでいるのか?と思うほどに。

冷静に戦況を判断しよう

だがそんな彼を馬鹿にはできない。

多くの人は、新卒で入社した会社においてはこのような働き方をしがちだ。

僕もそうだったから、わかる。

「キツい戦場で、劣勢を挽回してこそ武功だろ!」みたいに思っちゃうのだ。

でも違うんだ。劣勢なのにはちゃんと理由がある。なぜ劣勢なのかを冷静に考えてほしい。

  • そもそも自社製品に他社より優れた点があるのか?
  • そもそもこの商材は、時代遅れではないか?
  • そもそもこの商材は、儲かっているのか?

新卒で入社すると、こういう冷静な目を失ってしまう。

「とにかく自社を勝たせるしかねえんだ!ハンデは俺の努力で乗り越えてやる!」というのは、ある意味、調子に乗っている。自分の力を過信している。

残念ながら、営業マン一人の努力でひっくり返せる戦況などない。

そんな目で本作を読んでもらえたら、僕の言っている意味がわかってもらえると思う。

会社はいいのよ。でも営業マンの苦労は?

食品メーカーや飲料メーカーは、パッと見「良い会社」が多い。

まず一部上場の大企業が多いし、テレビCMもやっている。コンビニやスーパーでも目にするし、それこそ食べたことだってある。知名度もあるから合コンでのウケも良さそうだし、親族にも自慢できそうだ。親も安心するだろう…とにかく「知っている会社」だから、自分も安心だ。

多くの食品メーカーはその社会的存在感から、ホワイト化を推進している。女性の産休育休や復職率も高いと聞き及ぶ。僕の友人の姉もそんな働き方をしている。

しかし!

「営業マン個人の苦労はどうなのか?」という視点を忘れないでほしい。

確かに「会社としては」間違いなく「良い」のだと思う。財務も良く、利益率もあるかもしれない。

しかし営業マンはどんな戦場で、どんな戦いを強いられているのか?という目も忘れてはならない。

それはこの『営業の牧田です。』にリアルに描かれている!先述の菓子メーカーや日用品メーカーの知人たちの証言からも、本作はかなり実態に迫っている。

本作を読んだ上でなお、食品や飲料メーカーの営業をやりたいと思うなら、止めはしない。

だが読まずして、食品・飲料などを志向するのは危険だ。あまりに危険だ。とにかく商品棚を他社と争う「棚争い」という戦いは、ヤバすぎる。

どんなふうにヤバいんだよ?と思う人はとりあえず本作を読んでみて欲しい。たった数百円でこのリスクを回避できるのなら、とても安いと本気で思う。

ちなみに化学メーカーにはこういうことは全然ない。商材の特性というのはそれほどに大切なのだ。