化学メーカーは儲かっている。儲かっているので、業績や改善が評価につながりにくい。負け戦を勝ち戦にする武将の武功は大きいが、勝ち戦の中にいる武将達は武功など求めていないからだ。ゆえに儲かっている会社ほど、内部の上下関係や根回しを重視する。儲かっていない苦しい会社は実力主義、活躍したやつがエライ。しかし、儲かっている会社においては、それがない。
特殊文化だと知る
このように儲かっている化学メーカーには正常な市場原理というか、合理的な思考が通用しない環境なのだとまず知っておくことがとても大切だ。そうでなければ、そのおかしさと正面衝突してしまって、自分が被害を受けてしまう。
いわゆる、古き良き昭和の雰囲気が今もそのままの形で息づいているのが、儲かっている化学メーカーだ。外敵が少なく、ガラパゴス化している業界だからこういうことが起こる。実際、昭和の時代から人材も仕組みも進化せずとも生き残れているから、こうなる。そんな背景を知っておけば、このように競争原理が働いていない、合理的でない昭和な環境に出くわしてもショックを受けずに済む。まずは知っておくことが大切だ。
重視すべきは技術と生産
化学メーカーの営業職においては製品を開発する技術部や生産部、それ自体が自分の商品であるという意識を持つこと。営業マンというのは一応、正社員ではあるけれども、限りなく個人エージェントに近い存在だ。
技術部の最新情報を仕入れて良い製品を開発したり、生産部と顔見知りになり、製造の順番を忖度してもらったりすれば、お客様に価値を還元できるようになる。結果、売れる営業マンになれる。技術部や生産部は自分にとっての「協力業者」だ。書類の上では社内だが、気持ちとしては取引先だと考えよう。
技術部へはやる気を示せ
技術部と仲良くなるには、まずは顔を出すこと。たいていの営業は研究所や工場には顔を出さないのがほとんどだからだ。物理的に顔を出し、交流する。別に世間話をしろというのではない。むしろ僕も世間話などは不得意だ。現在の仕事のテーマについて、わからないことや相談したいこと、新たな案件について見解を聞きに行くなど、仕事に一生懸命な姿勢だけで十分だ。
技術の人々は、聞きに来ない営業に嫌気がさしている。技術のことについて勉強しなくても良いと思っている営業にうんざりしている。だから、その逆を示せば、技術の人たちから認めてもらうことは簡単なのだ。
「これってどういう仕組みなんですか」「なぜこういう組み合わせなんですか」と素朴に聞いてみるといい。技術の人はなんだかんだで教えたがり屋が多い。そんな人たちと絆を作るには、学ぶという姿勢を見せることが最も効果的な方法だ。結果として、営業マンとしての戦闘能力が上がる。
生産部には優しさを示せ
生産部にも、顔を出すことは大きな効果がある。やはり普通の営業は工場に顔など出さないからだ。だから、物理的に会いにいくだけでも大きな意味を持つ。
そして普段から、生産部の人たちには、営業としてはねぎらいの心と気遣いを示そう。生産部の人たちは「どうせ俺らは現場だし、工場だし、営業のいうことなら聞かざるをえませんよ」という自分を卑下した態度の人が多い。これは今までの蓄積だろう。事実、営業の力はどんなメーカーでも強い場合が多い。工場は言いなりだ。だからこそ、そんな工場の人たちにはねぎらいと感謝、思いやりの心を持って接するべきだ。
急なオーダーで困っていることはないか、営業で調整してやれることはないか、とかそういう気配りを見せる。そして、メーカー営業をしていれば、いつかは必ず、避けられないクレームがやってくる。それに対しては生産部と一緒に事に当たることになるから、その時に絆を深められるように、そのクレームに対して共に真摯に取り組めば大丈夫だ。
メーカーで営業をするならば、その源となる技術や生産は大切にしよう。営業の上司なんて、儀式をこなしてやれば良い。僕らが重視すべきは技術と生産や現場なのだ。
続き:上司をハックする
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