化学メーカー営業実務録:苦情・クレーム対応

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実務録
化学メーカー営業マン実務録。
今回は日常業務のひとつ、苦情対応について。

BtoCゆえ苦情は少ない

まず化学メーカーはBtoBビジネスのため、お客さんが「企業」になる。
しかも化学品という商材の特性上、それを取り扱う人は「プロ」がほとんだ。「シロウトさん」が扱うことはほぼない。取り扱いには知識が要るからだ。
そのような「プロ」が相手なので、一般消費者を相手とするBtoCビジネスよりは苦情が少ない。

苦情とクレームの違い

よく混同されがちな言葉ではあるが、クレームと苦情は異なる。
まず「クレーム」とは明確に損害が発生して、その補償・補填を求めるときに使う言葉だ。金銭での解決や、代わりの品物で補填する。そのため、真の意味での「クレーム」はかなりの大事になる。しかし世間一般では飲食店に文句を言う「クレーマー」が増えているように、この文脈で使われることが多いのだが、このような客が主張するのは多くの場合「苦情」である。
「苦情」はクレームと違い、実は実損が発生していない場合が多い。
「私がイヤな思いをした」
「腹が立った」
というのは苦情ではあるがクレームではない。
従業員の過失で負傷させてしまったり、客のクルマを壊してしまった等は紛れもなくクレームであるが、接客態度が悪いというのは苦情なのだ。

化学メーカーへの苦情

まず化学メーカーに日々降りかかってくる「苦情」について。
つまりは「実損は出ていないが、改善してくれ」という類の顧客からの意見である。
よくあるのは、時間通りに配達に来なかった、とか、積み下ろし方が雑で、ドラム缶がちょっと凹んだとか、そういうモノが多い。実は大体が、納入業者さんの「やらかし」であることが多い。
化学メーカーの落ち度としては、在庫を切らしており、急いで作っても2週間かかるとか、キャップがよく締まってなくて少し漏れてた、とか缶の外側がサビてた、等がある。これらは苦情が起こるたびに改善会議が行われ、改善策が打ち出され、解決する場合が多い。
営業マンとしての業務は、事の顛末をまとめた報告書を持参して、顧客に謝りに行く(場合によっては菓子折り持参)。
なお、この報告書も品質保証部とかが作るので営業マンの負担はほぼない

化学メーカーへのクレーム

さてクレームは、先述の通りカネが絡むことなのでキツい。
例えば、化学メーカーのミスで普段と違う物性のものを納入してしまって、それが顧客のマシーンを詰まらせてしまって壊してしまうことがある。もしくは最終製品に不具合が出て、回収騒ぎになったりする。その弁償が必要なときが、クレームとなる。
その弁償が場合によっては数百万、数千万になることもあるのでこの「クレーム」は会社にとっても一大事となる。
その一歩手前として、顧客が化学製品を使おうとしたときに、普段と色が違う、粘度が違う、などで異常を察知して知らせてくれることもある。
こうして大事故を防げるパターンが多いのであるがそれを大事にしないために、すぐに正常品を替わりに納入したりする手配を営業マンは粛々と行う。
小火のうちに消火する。大火災になる前に鎮火するのが営業マンの仕事だ。
とはいえ、営業マンとして難しいことは何もない。顧客から「これおかしくね?」という電話が来るから「すいません!すぐに替わりを入れます!」と対応して、そのように社内に指示すればよいだけなのだ。

苦情以下の「文句」

クレームや苦情には、大なり小なり、自社の落ち度がある。だからこそ、会社として誠意を持って対応する。それが信用につながるのであるが、顧客の主張全てが正しいわけではない。ここを見誤ると、何でも顧客の言いなりになってしまい、自社の利益喪失にもつながる。
化学営業マンの数少ない腕の見せ所は、この苦情以下の「文句」をいかに見きわめ、いかに捌いていくかにあると思う。
例えば「本来の用途以外の使い方をしたら製品がおかしくなった」という文句を言ってくる顧客がいる。これはわかりやすいが、本来想定している用途ではない用途で使ったら、そりゃダメだろというパターンだ。初めて採用するような顧客に多い。もしくは、大昔からやっている町工場、「エイヤッ!」で仕事しているようなオッチャンの会社はこういうことが起きる。
こういう顧客は「オタクの製品がおかしい!」と主張してくるが営業マンとしては「イヤイヤ、それはオタクのせいでしょ」というのをわからせなくてはならない。
もしくは、保証期間が過ぎている製品を使ってダメだったとか、明らかに顧客側のミスでの文句が来ることもある。「それって、オタクがミスってるんでしょ?」と、一線を引かなくてはならないときもある。
顧客の主張に最初に接するのは営業マンであるから、それを「文句」「苦情」「クレーム」に適切に判断・仕分けをして、対応していくことが営業マンの業務なのだ。