化学メーカー営業実務録:廃番と統合

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実務録
化学メーカー営業の実務を紹介していくシリーズ、今回は「廃番と統合」。

化学製品は息が長い

化学メーカーは多くの品番を持っている。歴史が古い会社ほど、40年前に生まれた商品が、今でも売れている、ということは珍しくない。しかし、時代の流れと共に、徐々に主流から外れてしまう商品も、どうしても出てきてしまう。
大昔、40年前はスゴイ量が出ていたのに、使うお客様が1社また1社と減って、今では最小単位で作っている…ということも珍しくはない。
そしてそれは、ただ単に減っている、というわけでもなく、最新版の製品へアップグレードしてる場合がほとんどだ。規制物質を取り除いたものとか、性能アップしたものとか、コストダウンした、などでアップグレードしている。この流れに乗り遅れている顧客が、いつまでも古い製品を今日も変わらず発注してくるのだ。

廃番の理由

そのように、使用する顧客が減ってくると、化学メーカーは廃番を検討するようになる。
売れる量が少なくなるならば、作る量も減らさなくてはならないからだ。
そうして製造量を減らしていくと、人件費の割合が増えたり、いろいろと非効率になってくる。
つまり儲からなくなってくる。
それが一定のラインを下回ってきたら、顧客に「廃番」を打診することになる。

廃番への道

当然、「廃番」を突きつけられた顧客は驚くし、困ってしまう。
それまで使っていた材料がなくなってしまうのだから。製造業にとっては、材料が変わるというのは大事件である。だからこそ、アップグレード品が使えるかどうか検証をすることを、ついつい後回しにしてしまうのだ。
しかしながら、いざ「廃番」となればもはや逃げ道はない。顧客もしぶしぶ、アップグレード品や類似品の検討を始めていく。この検討の手伝いをしてあげるのが、化学メーカー営業マンの任務の一つである。
こうして、廃番を進めるにあたっては、代替品を提案していく。その代替品がバチッと決まれば文句はないのだが、そう都合よくいかないこともある。そういう時は、同じような境遇のユーザーを集めて、統合して、数量を確保するなどの対策もある。

無慈悲なる切り捨て

しかしながら、それでもダメなときもある。手を尽くしても、それでも解決できない事もある。そんなときは…あきらめる。つまり見捨てる。
オイオイそれって冷たくね?無慈悲じゃね?と思うが、そもそもそのような事態に追い込まれている時点で、その顧客の商品の命脈は尽きていることが多い。
もはや世の中の主流の工法ではなかったり、明らかに時代遅れだけど、同じく時代遅れな末端ユーザーがいるせいで続けているパターンなどがある。
そんな製品に引導を渡す場面もあった。

化学メーカーの「強さ」

ここで僕が感じたのは「化学メーカーって、強いな」であった。
このように、自社の都合でもって商品を廃番にする。特に小規模な顧客の意見はあまり聞かない。
「儲からないから、やめます」でやめれてしまう。むしろ「値上げしてもいいから作ってくれ」とさえ言われたこともある。だが結局は折り合いがつかず廃番した。
若き日の僕は「なんなんだ、この強さは」と驚いた。
この「強さ」の源は何なのだろうか。それは化学品がもつ特性のおかげだと気がついた。
化学品は、非常に精妙なバランスで成り立っている。パッと見のスペックが似ていても、全然違うことはよくあることだ。だから切替が困難で、廃番に際してもこのように強気でいられるのだ。
もちろん「買っていただいている」という意識はあるものの、一方で「供給してあげている」という意識も持っている。特に小規模な商売は、後者の思いのほうが強くなる。

渉外行為:廃番リスト掃除

このように、小規模な販売しかない商品郡は、結構ある。
先月までたくさん売れていた品番が、ビッグユーザーがアップグレード商品へ切り替えたら、一気に少量製造に追い込まれたりする。
末端商品が売れなくなっていって、自然と減っている商品もある。
だから、毎月毎月、廃番候補リストは追加されていく。
まさに掃いても掃いても降り積もる落ち葉のように、この「掃除」は終わることはない。これを片っ端からやっつけていくのも、営業マンの重要な役割・任務となっている。
これは営業タイプ5分類でいうところの「渉外」に該当する。
廃番リストを掃除していくことによって、自社の生産効率をメンテナンスして、儲けを確保していく。これも、化学メーカー営業マンのルーティンのひとつである。