化学メーカー営業実務録:マイナーチェンジ

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実務録
化学メーカー営業マンの実務について解説していくシリーズ。今回はマイナーチェンジについて。

マイナーチェンジとは

マイナーチェンジとは、大きな変更点ではなく、軽微な仕様変更を指す。大幅に変更することはモデルチェンジという。よく、自動車関連で耳にする単語であるが、化学メーカーにもマイナーチェンジは存在する。
化学品の場合は、使用原料が替わることを指すことが多い。

原料の変更

なぜ原料を変更するのか。それは、日々増えていく規制物質に対応するためである。含有物質調査編でも述べたが、近年では化学物質が人体や環境に及ぼす影響を考慮して、規制物質が増え続けている。
明確に危険なものとして、毒劇物に指定されるものは当然として、「これもしかしたら人体によくない可能性があるかも?なくはないんじゃね?」程度の物質もリストアップされたりする。こういう「あやふや」なリストは、法的な拘束力がないのであるが、リストに載ってしまうと、なるべくそれは避けたほうが無難、という判断になりやすい。
昨日まで問題なく使用していた原材料が、そのようなフワッとしたリストに入ってしまうと、使用原料を見直さなくてはならなくなる。
こうして、化学メーカーが使う原料も、影響を受けていく。そして、切替が発生する。

大勢に影響なく見えるが…

このマイナーチェンジは、多くの場合、少量の添加剤など、大勢に影響を及ぼさないパターンがほとんどだ。だからこそマイナーチェンジなのであるが、簡単に無視できなかったりする。
他の材料と混ぜたときに、新しい材料にすると化学反応してしまう成分が入っていたりするからだ。僅かだがガスが発生して気泡が出来てしまったり、固まってしまってゲル化してしまったりする。そのように製造途中に変化が起きなくても、出来上がるとなんか見た目が違うとか、質感が変わってしまうとか、水に弱くなってたりとか、そういうリスクはゼロではない。
顧客は、マイナーチェンジした仕様でも問題ないか、確認する必要があるから、そのためのサンプル提供とか、場合によってはマイナーチェンジのマイナーチェンジを手配しなくてはならないこともある。

4M変動

製造業には特に重視される4要素がある。
  • MAN(人)
  • MACHINE(機械)
  • MATERIAL(材料)
  • METHOD(方法)
これらが変更になることを4M変動という。
先述の通り性能や仕上がりに影響がないかはもちろんであるが、「書類」も変更が必要になる。材料が替わると、書類も修正しなくてはならない。当然、法令に準拠するように検証も行われる。
化学品のマイナーチェンジは顧客にとってはまさにMATERIALの変更であるから、先述のように検証が必要なのだ。製造業というものは、それほどに緻密に出来ていると知ってもらえたかと思う。

輸出品は特に注意

このようなマイナーチェンジを行うと、各種の書類変更が必要になる。その「書類」とは、日本国内のみで有効なものと、世界的に有効なものがある。もちろん、アメリカやEU、中国など、それぞれの国に固有の書類があり、もっと細かく言うとアメリカやカナダでは州ごとに法令が違うから非常に煩雑だ。
たった一つ、原料を切り替えるとこれらをすべて書き換えなくてはいけないし、特に輸出用は輸出先の国の認可を得たりする必要がある。そうでなければ通関を通れない。
しかもアメリカはOKだけどカナダはダメ、とか結構あるし、そもそもEUは化学物質について非常に厳しい規制をもっていたりする。
化学営業マンとしては、こういう規制があるんだな、と知っておくだけで十分だ。必要な調査は品質保証部や技術部が行ってくれるから、そうして出てきた書類を顧客に提出すれば良い。
…とはいえ、営業マンが書く書類はひとつもないから安心して良い。
営業部にはそもそも書く権限がないからである。
こういう書類は品質保証部が作成しなくては、意味がないのだ。