新規事業・新商品の開発

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知識習得

5年目に突入し、新規開拓を小規模ながらも成功させたならば、その時点で既に並みの化学営業マン達と比べたら頭一つ抜きん出ている。なぜなら新規開拓をせずとも「店番」を頑張っていれば合格点なのが化学メーカー営業マンだからだ。

しかしながら、頭一つ抜きん出ているだけで天狗になるのは早計だ。本記事では社内での地位を揺るがぬものにし、かつビジネスマンとしてのレベルアップのために必要なことについて紹介する。

前提:パイの奪い合い状態

まず前提として、儲かっている化学メーカーに勤務している場合、既に売れている商品がある。通常、企業はリスク分散のために商材を複数の客先や業界に分散しているかと思う。そして、儲かっているという前提から、既にそのマーケットは実質的に独占していたり、もしくは寡占している状況である場合が多い。

市場のパイが決まっていて、それを少ない競合他社で奪い合っている状況だ。この状況にあると、大きな成果を出すことは難しい。よほどのこと(大手メーカーが大規模事故で操業停止とか)が起きない限り、シェアが大きく動くことはない。儲かっている化学メーカーというのは、そういう高い障壁があるから儲かっているのである。

長い歴史の中で、既に化学業界というのは淘汰が進んでおり、この2019年に生き残っている会社にはそれなりの理由がある。既に統廃合は行き着くところまで進んでいる。だから、市場のパイは固定化しており、ゆえに安定している業界なのだ。

ちなみに、僕がこれまで推奨してきた新規開拓は、正直、業界全体から見たらコンマ数パーセントの変動に過ぎない。これから推奨していくのは、その枠から出られるような施策だ。

新商品の開発

まずは新商品の開発だ。勘違いしてはならないのは、単に新しければ良いということではないし、現行の製品をちょっと改良しました、という性質のものでもない。

「今ある製品の延長線上にある製品」では新商品とは言えない。ただの改良品だ。

僕が思う真の新商品とは「現行の製品ではできなかったこと」をクリアした商品だ。もしくは、かつての方法では到底無理だった値段で提供できる、も該当する。

オイオイそんな夢のような製品、簡単にできるはずないじゃないか、できるならとっくにやっているよ、というツッコミは当然のことだ。難しいことはわかっている。だからこそ、取り組む意味がある。

しかも我らは営業マン。技術的なことは実はわからない。実際に手を動かしてくれるのは技術部や生産部だ。では、我ら営業マンにできることはなんだろうか。

それは「情報収集」と「結合」による「新機軸」の打ち出しだ。顧客(顧客の技術部など)と接する営業マンだからこそ、要求される性能について知見が広がる。現状では材料にこういう限界があるから、これ以上の性能が出せないと情報収集する。同業も同じような環境であるから、その問題は、業界全体を見回しても、簡単には解決しない問題であろう。

それはそれとして、そのことを頭の片隅に持っておく。そして「いつかは何とかしてやるぞ!」と思う。思っているだけでいい。なぜなら、思っているだけで、情報収集のアンテナが高くなり、何かそれに対する解決策の糸口が他の案件で見えてきたときに「あの時のあの案件に、再挑戦できるのでは」というひらめきが発生するからだ。

ここで大事なのは「ウチの製品の性能では無理だ」と諦めてしまって、「いつか何とかしたる!」という思いをなくしてしまわないことだ。こうなると、アンテナは折れてしまい、良い情報が入ってきてもスルーしてしまうようになる。なぜこんなことが起きるかというと、例えば自動車業界では常識のことが、農業の業界では常識でないことがあり、自動車業界の知見を持込めば簡単に解決できる、といったパターンがあるからだ。

これは、机でウンウン唸って考えたりしても思いつくことではない。ふとしたときに「アレ?これってあの案件に応用できるのではないか?」と思う素地を持っておくことが大事なのだ。もちろん、全ての問題をクリアできることはない。本当にできないこともある。しかし、一部分だけでも改善できたり、コストが下がったりすることは十分に考えられる。

そこを狙うのが新商品の開発だ。こうして作れた新商品は、既存のパイの奪い合いを飛び越えて、他の市場に売り込んでいくことができるようになる。このような営業展開ができると、ただの新規開拓だけではない「大きな実績」を作れたことになり、社内での地位はますます盤石になる。

新規事業の開発

前項で、新規商品の開発について説明した。新規商品を開発することで、社内での営業マンとしての地位は強固になる。それを複数回繰り返して、実績を積み重ねれば、人手不足・若手不足の化学業界においては、後顧の憂いはない。

またこの経験は、推奨はしないが転職をする際にも強力な土産話となることだろう。単に今売れているものを伸ばすことは、ぶっちゃけ誰でもできる。そうではなく、もともとなかったところから数字を作るというのは、どこの業界でも通用する力だからだ。

さて、そのように新商品を作ることができたなら、次はその上位互換として、新規事業の開発にチャレンジしてほしい。もちろん、簡単なことではなく、数年単位での取り組みになる。

まず、なぜ新規事業が必要かというと、儲かっている化学メーカーには盤石な基盤があるものの、それがいつまでも続く保証もないし、またさらなる拡大を図るには、新事業の開拓をしていかなくてはならない。これは化学メーカーに限らず、世の中の企業すべてにあてはまることだ。

ただし、化学業界は今いる基盤の強さが他業界よりも圧倒的に強いので、あまり危機感はない、というのが正直なところだ。

では、新事業とはどうやって作れば良いのか。それは、新商品を作り続けていくと自然に見つかってくる。正確には、インパクトが甚大な新商品を作った時、新事業もその商品をコアにして同時に生まれる。前項で述べたように、新商品を作る時には「既存商品の限界」という枠を乗り越えていく必要がある。このときに新事業も一緒に生まれることがあるのだ。諦めず、これを狙い続けよう。

プロセスを今一度思い出そう。

  • 現在の商品では達成が難しいこと
  • 他社も無理だと思っていること

この2つの障壁を乗り越えたら、競合はいない。競合がいない豊穣の地を見つけ出すことが、営業マンとしての究極の使命だ。激しい乱戦に突入し、戦いの末にシェアを取るよりも、誰もいない豊穣の地を手に入れることが最上だ。

軸ずらし

とても困難なことに思えるかもしれないが、わずかに軸をずらしたり、業界を変えたりするだけで意外と見つかったりする。だから諦めてはいけない。

例えば、お隣の業界ではとても高い材料を使っているとする。完全互換ではないものの、一部の工程で自社の製品で安くカバーすることができて、大幅にコストを下げられるかもしれない。ただし簡単にクリアはできそうにない…

こういう時がチャンスだ。技術部に頑張ってもらって、なんとか作ってもらおう。最初は無理だと言われるだろうが、なんとかやってもらおう。熱血系技術マンを味方にしておくのがコツだ。

そして首尾よく新たな市場を切り開けたら…あなたは新事業を作った人になれる。

よく言われる例だが、誰も靴を履いていない国についたときに、「誰も靴を履いていない、靴なんか売れるはずはない」と思うのか、「これは靴を売る大チャンスだ!ものすごい数が売れるぞ」と思うかの違いだ。既に皆が知っている市場に、旨味は少ない。誰も手をつけていない市場を作り出そう。

続き:ブラックボックスを作る